だから私はあなたを、救おう。


「私があなたを、癒したい」


月明かりの下。光る私の目と、揺れる彼の目が重なる。


頬に2人分の熱が伝わってジンジンと熱いくらいだった。


彼は1歩足を踏み出したかと思うと、力強く私を抱き締めた。


私も背中に手を添える。


バイクで背中にしがみつくのとも違う、襲われたときに肩を抱かれたのとも違う。


真正面で抱き締め合うのは1歩先の世界だった。


私はあなたを癒したい。救いあげて、過去の痛みを忘れさせてあげる。


そして裏切られて消えたあの子のように、今度は私があなたの心を引き裂くの。


私の心の内などいざ知らず、彼の中で私の存在は確かなものになり始めていた。