「私を、水憐の姫にして。あなたたちの仲間になりたい」


脈絡もなく言ったそれに、彼はこちらを向いた。


目に映していた光は影になって消える。


「なんで、泣いて…」


雫で濡れている私の目と頬を見て、ギョッとする。


分かりやすく狼狽えた來は、そっと私の頬に触れた。柔らかく、その涙を拭う。


泣いているのは私なのに、心を痛めているのは彼だった。


月を背にする彼の表情は分からない。それでも手のひらの温かさがこの人の心を伝えてくる。


私の右頬に添えられた彼の手をそっと包んだ。


このときには私は既に冷静だった。彼の心が揺れているのを知っている。


どうしようもない過去に頭を巡らせているのが分かる。