今さら気を遣う必要もないので、許可を取らずにカバンを漁る。
財布に、メイクポーチに、スマホに、なぜか食いかけのハッピーターン。中身を全部出して外ポケットも確認したけれど、本当に鍵は入ってなかった。
「お前、バカなの?」
ため息まじりに、呟く。
あとで大学に取りにいくつもりだったのか、それとも泊めてくれそうな人を頼るつもりだったのか。いや、友達はいないって言ってたし、この無防備な感じだと彼氏はおろか親しくしてる男もいないだろう。
「藤堂しゃん、お会計は私が払いますからお気になさらずですよ~」
雪村はむにゃむにゃと独り言を言っている。
まあ、今は六月だしここで寝ても死ぬことはねーわなと、俺は支えていた腕を離して、雪村をドアの前に置く。
自分ん家の鍵はスマホで開けられるように設定してるので、専用のアプリから施錠を解いた。
「風邪引くなよ」
「はーい、藤堂しゃんも~」
雪村は違う方向を見て、手を振っていた。
せっかくいい酒を飲んでたのにこれじゃ台無しだ。俺も寝る前に飲み直そうなんて考えながら家に入ると、ドサッという鈍い音が聞こえた。
確認するように外を見ると、雪村が廊下で寝ていた。



