「……私、さっきの人にも騙されちゃったんですよ」
雪村は飽きずに4杯目のチェリーブロッサムをオーダーする。
「オカルト研究の資料をたくさん持ってるって言うから私嬉しくて付いてきたんです。楽しくお喋りできたらいいなって思って」
呂律の回らない口調で、雪村は悔しそうにしていた。
「オカルト研究って?」
「私、都市伝説的なことが大好きなんですよ。フランケンシュタインとか魔女とか狼男とか!」
「へえ、変わってますね」
「その中でも一番はヴァンパイアが好きなんです!」
雪村は興奮しているのか、声が大きくなっていた。
俺はロックグラスをゆっくりと回す。丸型の氷がいい感じに溶けてカランと、耳障りのいい音を奏でていた。
「でもヴァンパイアって血を吸うでしょう?僕は少し怖いかな。噛まれたら痛そうだし」
すると雪村は全力で首を横に振る。
「たしかに特性として血を好みますが、実は噛まれたほうはあまり痛くないらしいんです」
「と、言うと?」
「ほら、注射とかされても痛みって一瞬じゃないですか。それと同じでヴァンパイアの牙もすごく尖っているので皮膚を噛むというより刺すに近いんだと思います」
俺は「なるほど」と言って、無意識にタバコに手を伸ばした。
基本的にタバコを外で吸うことはない。雪村は〝吸うんですね〟というような表情をしていたけれど、とくに嫌がる素振りは見せずに、また話はじめた。



