「は?俺にお前の血を吸えってか」
「はい、できればよろしくお願いします」
本当にこの女は変だ。
いくらオカルトが好きだからって、自分の血を吸ってくれと頼むなんて、変を通り越してヤバいと思う。
「酔いが覚めたなら出ていけ。お前のことは好みじゃないんだ」
駅前に行けば24時間営業の漫喫があるし、朝を待つ方法なら探せばいくらでもある。
「藤堂さんの好みはどんな女性ですか?」
「まあ、出るとこ出てて、色気がある女?」
あと恋愛経験豊富で、後腐れなく付き合えるような人。
こんな男に騙されてばかりで、酔い潰れて足を広げて寝るような、ラットみたいにちょこまかしてうるさい雪村なんて俺にとっては論外だ。
「そう、ですか……」
まるでフラれたみたいな顔をして、雪村はベッドから足を出す。
――と、その時、床にあったなにかを踏んだようで「痛っ」と声を出した。床にはキラリと光るガラスの破片が落ちている。
そういえば昨日コップを落として割った。片付けたつもりだったけれど、破片がまだ残っていたようだ。



