時計を見ると深夜2時を過ぎている。こっちは朝早くから研究室に行かなきゃいけないっていうのに、こいつのせいで徹夜は確実になった。
「とりあえず二十歳過ぎてんなら、自分がどれだけ飲めば潰れるか勉強しとけよ」
「……はい、すみませんでした」
雪村はベッドの上で正座をしていた。
俺は右手に持っていたタバコの火をビールの空き缶に押し込む。部屋がやけに明るいと思ったら、窓の向こう側で満月がでかでかと浮かび上がっていた。
「わあ、まるで狼男が出そうな月です」
雪村はまた無防備に俺に背を向けて、満月を見ていた。
「お前は、俺が危険なヤツかもしれないって思わないわけ?」
「どうしてですか? 藤堂さんはいつも挨拶してくれますし、こうして私のことを介抱してくれました。とても優しいお隣さんだと思っています!」
まだ酒が残っているのか。それともこいつが能天気すぎるのか。おそらく後者だろう。
俺はこう見えてエリートだ。理系の大学院に進み、博士号を取って、三月までは海外にいた。
それで日本に戻ってきて駅から近いマンションを借りて平穏に過ごしていたのに、まさかこんな生娘の女子大生が隣人になるなんて思ってもみなかった。
「噛むじゃなくて、刺すんだっけ?」
「え?」
「良かったな。大好きなヴァンパイアに会えて」
俺はゆっくりと雪村に近づいた。



