お昼休み。
 夏菜がロビーの自動販売機の前で、彩美たちと珈琲を飲んでいると物陰から有生が手招きしてきた。

 すすすすっとさりげなくそちらに行くと、有生は、

「今日、ちょっと食事でもして帰らないか?
 ……道場にも連絡しておく。

 別に平日でもマンションに泊まっていいとお前のじいさんも言ってたし」
と言ってくる。

「え、いや、でも……」

「いいじゃないか。
 黒木さんも俺たちの結婚を認めてくれたことだし」
とその言葉が免罪符であるかのように押してきた。

「いやー、まあ、そうなんですけどねー」
と苦笑いでごまかした次の日、有生がまた手招きしてきた。

「上林さんも認めてくれたので、いいんじゃないか?」

「上林さん、最初から反対してないですよね……」

 っていうか、上林さんにも訊きにいったのか、と思う。