ストレートロングの黒髪はいつも艶やか。一重の瞼が一見すると冷たい印象を与えるが、笑うととてもチャーミングな女性だ。おまけに人懐こくてお客にも慕われている。


「手伝いましょうか?」
「店内は大丈夫?」


平日の昼間のため、それほど混雑はしないだろが。


「はい、琴乃(ことの)がいますので」


琴乃は紀美加と同い年。ベリーショートのヘアスタイルがよく似合う元気な女の子だ。ふたりは気が合うらしく、話に夢中になるとお客の存在を忘れてしまうのがたまにきずである。


「じゃあ、お願いしちゃおうかな。これはハンギングするからハンガーを準備してもらえる?」


紀美加は「はーい」と答え、奥の棚からハンガーの入ったダンボールを運んできた。美紅がチェックしたものを次々と掛けていく。


「今度あるクリエーニュの親睦会の場所って、美紅さんは行ったことあるんですか?」
「軽井沢の別荘? うん、あるよ。といっても小中学生の頃の話だけどね」