「いっくん、さっきのもう一回言って」 一慶に向き直り、顔を見上げる。 「なんで」 「聞きたいの。お願い」 「愛の安売りはしない主義だから」 手を合わせて懇願したが、一慶はまったく取り合わない。こんなことなら録音すればよかったと後悔だ。 「そんなに言ってほしいなら」 一慶は肘を突いて体を半分起こし、艶めいた瞳で美紅を見下ろす。 「もう一回しようか」 「えっ? ――んっ」 美紅の願いは、一慶の唇に飲み込まれた。