美紅は思いきり首を横に振り、「私が好きなのはいっくんなのに」と呟く。 その言葉が一慶の頭の中をかく乱したときだった。 「美紅ー! おーい、美紅ー!」 「どこにいるのー?」 晴臣と佐和子の声がふたりのもとに届いた。 「ここだ!」 咄嗟に一慶が声を上げると、懐中電灯の光がふたりを照らす。 「一慶! 美紅もそこにいるのか!?」 「ああ」 眩しさに目を細めながら答え、一慶は「ほら、行くぞ」と美紅をおぶった。