『よく分かんないからさ、当面の私の生活必需品と住むところの支度を頼むよ。特に休みも要らないしその日からの流れの一切を任せます。私は私で旅行程度の荷物は持ってくから』


TPOに相応しい服とかさ、と言われたので。
その気になってくれたのは嬉しいと簡単に約束を取り付けて。


気が変わってしまう前に帰ってこいと急遽五日後、空港へ迎えに行く手筈まで済ませて。


思ったよりトントン拍子に行き過ぎたせいでなんの支度も済んでないのに。


「…もしもし、社長?
五日後帰国予定っす。」


『なに!?お前にまで嫉妬する時が来るなんて思わなかった!何を餌に釣っりやがったァ!?』


「いや、ふーんって、ビザ切れるしいいよーって」


んな訳あるかァ!と鼻水を啜りながら怒りながら、そして嬉しそうに。


帰ってくるという事で胸がいっぱい、と乙女みたいなことを口走ったあと一方的に電話を切られた。


住むところ…あと業務…まぁいいか。
言った通り腐る程あるし、やらせたい事は決まってる。


あとは口止めされたことを秘めながら聞かれた時の交わし文句を考えて、どういう立ち位置で迎えてどう過ごさせるかは。


「五日しかねーのかよ、はは」


楽しみだなぁ畜生と、やっぱり焦りよりも嬉しさの方が込み上げてくるこいつも。


《伝説の歌姫》を溺愛しカムバックを心待ちにする一人で。


けれど本人が望まない以上強要も出来なければそんな希望を抱くことすら出来ない。


「あいつらなら多分、姫をその気にさせてくれるだろうけど、はぁ…」


悔しいが身内の声は全く届かなかったという前例がある。
そして社長という立場を社長自ら悪用に近い方法で利用したことで、警戒心さえ持たれてる。


数日前に自分で前科なんて言うもんだから、笑ってしまった。









ただ帰国させてそばに置きたいだけではない、やっぱり理由はあるし、周りの人間みんなが望むこと。


そしてきっと本人も…。