「そんな不安そうな顔しな。これからウチがいろいろ教えたるからな。最終目標は、亜弥ちゃんが自分を助けられるようになることや」
「……自分を?」

 意味がわからずに聞き返すと、「そうや」と伊予さんは肉まんみたいな顔でうなずいた。

「ひとりでなんでもできる、ってのと、自分を助けるってのは大きく違うんやで。自分を助けられる人は、ほかの人も……って、それはまた今度な。とにかく、任せときっ!」

 と伊予さんは私の背中をバシンと叩くから、廊下に倒れこみそうになった。


 遠くで雨の音がひときわ大きくなった気がした。