「出水さん、大丈夫ですか!?」

 お父さんを押しのけた女性に尋ねられる。

 ……誰? 言葉にする前に、第二波の痛みに悲鳴をあげていた。

「頭が痛いんですね? 血圧を測りますね」

 やめて。痛い。
 頭が痛いよ。
 触らないで!

「リョウは。リョウは……っ!」

 強い痛みの衝撃に、気づけばベッドに仰向きに倒れていた。天井が遠くなったり近くなったりしている。

「先生を呼んできます」

 ――そんなのどうでもいい。

「亜弥、しっかりしろ、亜弥!」

 ――私のことじゃない。知りたいのはリョウのこと。

 必死で腕を伸ばす。昨日の夜と同じように。

 宙を掻く指先はなにも触れることはなく、世界は真っ暗に色を落としていった。