窓越しに青い空が見えている。雲がひとつ、ぽっかり浮かぶ夏の空。
 すごく、まぶしい。
 ぎゅっと目を閉じたらなぜか涙がこぼれた。

 悲しい夢でも見たのかな……。

 目を閉じたままで記憶をたどるけれど、どんな夢だったのか覚えていなかった。
 もう朝になったみたい。カーテンを引くのも忘れて寝たなんて久しぶりだ。

 体を動かそうとしたとき、
「っ!」
 激しい腰の痛みにうめいてしまった。

 続いて膝がジンジンと痛みを主張し出した。次は足首。連鎖していく痛さに歯を食いしばる。

 なに、なにが起きたの?

「痛い……」

 うめくように声を出す。

「亜弥!」

 この声は……。目を開けると、ベッドの横で目を見開いているのはお父さん。

 え? お父さんがなんで私の部屋に!?

 意志とは関係なく「あ……」と、やけに渇いた声が小さくこぼれた。
 そして、気づく。ここは病院なんだと。
 どうして病院にいるのだろう。そうだ、昨日はリョウとデートをして……。

 瞬時に脳裏(のうり)によみがえる記憶。

 まぶしいヘッドライトの前に立つリョウの姿。

「嘘!」

 起きあがろうとするけれど体に力が入らず、くしゃんとつぶれた。

「待ってろ。看護師さん呼んでくるから!」

 バタバタと出ていくお父さん。開けっ放しのドアの向こうから、アナウンスの声が聞こえている。

 夢だよね……。そうだよ、あんなの夢に決まっている。

 なのに、涙が一気にあふれた。否定しても、夢なんかじゃないと体が訴えているから。
 看護師を従え戻ってきたお父さんの腕を掴んだ。

「リョウは……?」

 どうして目を逸らすの?

「ねぇ、リョウは!?」

 必死で声を振り絞る私に、お父さんは視線を落とした。ひどく残酷な仕草に思えた。

「なにが……あった、の?」
「さあ、横になって」

 肩に置かれた手を、無意識に振り払っていた。

「ちゃんと教えて! ねぇ、なにがあったの!?」

 一瞬たじろいだように弱気になった顔のお父さんに傷つく。

「事故に……遭ったんだよ」
「事故……」

 やっぱり! ぐわんと視界が揺れると同時に、刺すような頭痛が襲いかかってくる。

 頭を押さえてもどんどん強くなるばかり。