日曜日の夜だけあって、駅前には人の姿はほとんどなかった。時計はもうすぐ十時を指そうとしている。
 明日香や小春は今ごろ家で怒られているのかな。私のせいで申し訳なかったな……。
 駅前のベンチに座る私。今日だけで三回も同じ場所に座っているなんて不思議だ。

 右手には波に洗われたペンダントがある。
 リョウは許してくれるかな、こんな私を。
 バイクの音が遠くから聞こえた。さっき約束をしてから、まだ二十分しか経っていない。

 やっぱりリョウだ。道端にバイクを停めると、黄色いヘルメットを取るリョウ。グレーの半そで半パンに着替えたリョウが、私に近づくと同時にギョッとした顔をした。

「な……。どうした? なんだよ、その恰好!?」
「ちょっと探し物をしてて……」
「探し物。え……?」
「ううん、なんでもない。もう見つかったから大丈夫なんだ。それより、ね……」

 言わなくちゃ。ちゃんと伝えなくちゃ……。

「さっきはひどいこと言ってごめんなさい」
「べつに、いいよ」
「よくない。私がヘンなこと言ったから……」
「いいよ」

 そっぽを向いてしまうリョウ。

「本気じゃなかった。あんなこと言うべきじゃなかった」

 なにを悲しんでいるのかわからないけれど、一気に涙がこぼれた。一度決壊(けっかい)した防波堤はあっけなく涙を流し続ける。

「そばにいたい。リョウのこと、ずっと見ていたい。ジャマになる日まで……」

 声にならない。

 どうやったら許してくれるのだろう。

「バカ」

 その言葉を耳にしたとたん、私の体はリョウに包まれていた。

「亜弥はほんとにバカだな」
「リョウ……」

 片想いは苦しい。
 片想いは悲しい。
 だけど、それ以上にうれしい。

「俺がいつジャマって言ったんだよ。亜弥がいれば俺も元気になるんだよ。そんなこともわかんねえのかよ」

 やわらかいにおいに目を閉じ、リョウの背中に手を回した。

「亜弥のことが好きなんだ」
「……え?」

 体を離そうとするとさらに強く抱きしめられた。