「蕪木さーん、これの資料どこにあるか知ってる?」

「あ、それならー.........あった。すみません、私が。」

「いいよいいよ、ありがと。」


 同期会をしてから、私はまた平穏な日常を過ごしていた。それは、家と会社の往復をする毎日。

 でも、気がかりなことが一つだけある。あの日、祐一が家には帰ってこなかったこと。私は1時を過ぎた頃家に着き、翌日、目を覚ましても彼は横にいなかった。

 そして、帰ってきたのは夕方。友達と飲んでいたにしては帰りが遅くて、思わずそう突っ込みたくなった。だけど、できなかった。


「朝方まで飲まされて、起きたの昼過ぎだったよ。」

 そう笑いながら言った祐一の顔は、いつもと変わらなかったから。私は、それを聞いて笑うことしかできなかった。

 いつもそうだ。何を聞いても疑う要素を見せない。でも、その日は違った。初めて、違和感を感じた。


 祐一は、そのままシャワーを浴びに浴室へ入った。私は彼の脱ぎ捨てたシャツを拾い上げ、洗濯機に入れようと手に持つ。

 すると、思わず体が固まった。


 そのシャツから、ほんのり香水の匂いがしたから――