「ねえ、彼女作らないの?」

 私は須崎くんの横を歩きながら、ふとそう思って言うと、彼は面食らったような表情をして私を見た。


 入社当時、彼にはたしか彼女がいた。大学から付き合っていた子で、でもすぐに別れてしまい、それからは取っ替え引っ替え彼女が変わっていたのを覚えている。ただ、入社2年目のあたりからか、ぱったりと彼女を作らなくなった。なぜかと聞いても、別に理由はないの一点張り。

 元々恋愛に興味がない雪哉みたいなタイプなら分かるけれど、ずっと彼女がいた須崎くんみたいなタイプは、何かあったとしか考えられなかった。


「なんで?」

「えー、だってモテるでしょ?私、こんなに優しい人みたことないよ?祐一も優しいなって思うこと多いけど、須崎くんは優しすぎる!女の子が絶対喜ぶ優しさだよね。」

 私はお酒の勢いで、おしゃべりになっていた。すると、彼はため息をつき、頭をクシャクシャとかいて言った。


「女の子が喜ぶって言っても、好きな子に響いてくれないと意味ないんだけどね。」

 私は、唐突にそう言う須崎くんの返答に驚いた。

「好きな人、いたの.....?」

 今までそんな話、聞いたことがなかったから。


「いないとは言ってないけど。」

「えー、じゃあ誰なの?私の知ってる人?」

 須崎くんの好きな人なんて興味がありすぎて、私は興奮気味にそう言った。