初めは、単純に可愛いなと目に止まっただけ。芸能人並みに華のある子だったから、すれ違う人みんなが一度は彼女を見てしまう。俺も、そのうちの一人。


 でも、何度か見かけるうちに、いつも人に囲まれ、パッとその場を明るくする太陽みたいな彼女の人柄が気になるようになっていた。

 自然と彼女の姿を探すようになっていたし、気づいた時には話したこともないその子に惹かれていた。


 百合とのことがあった俺にとって、詩音の存在は癒しだった。どんな声で話すのか、どんなことで笑うのか、彼女のことが知りたくなった。


 だから俺は、あの日詩音に声をかけた。


 倉庫の前で、たくさんのファイルを持っていた彼女。絶好のチャンスだと思った。

 今しかないとそう思って、勇気を出してしらじらしく声をかけ、必死で親切な人を演じた。


 すると、彼女は想像通りの子だった。

 こちらを見上げてくる姿は可愛くて、顔はタイプど真ん中。最初は疑いの目を向けられながらも、会話の中で垣間見える笑顔や明るい雰囲気に心を奪われた。


 俺はいつの間にか、詩音のことで頭がいっぱいになっていて、自分でも驚いたけれど一瞬で恋に落ちていた。