携帯を手に握りしめたまま悩んだ結果、心を決めて指を動かした。
『ごめん、風邪ひいちゃった。』
そう一言だけ打ち、仕事に戻る。みんなには会えない。これからどんどん大きくなっていくお腹を、どう隠し通すべきか。
そんなことも深く考えられず、今はひとまずみんなにバレないように過ごすしかなかった。
そうして同期と会うことを避けながら、過ごすこと1週間。そろそろつわりもピークで、まだお腹は目立っていないものの、隠し通す余裕もないくらいに体調は最悪だった。
そんな中、裏ではとにかく気を回してくれた成宮さん。会社でバレないようにと、何かと理由をつけて、一人で仕事ができるように取り計らってくれた。
そのおかげで、疑われることもなく、なんとか仕事をこなすことができている。
「お疲れ様でーす。」
私はいつものように仕事を終え、コートとマフラーに身を包み、会社のビルを出ようとした。その時だった。
「よっ。」
なぜか、私を待っていた人物がいた。壁に寄りかかっていた彼は、私と目が合うと、こちらに近づいてきて手を上げる。
「おっ.....。」
須崎くんだった。私はどうしたらいいかと戸惑い、そう反応したまま口をつぐんだ。
「今から、時間ある?」
「.......うん。」
一瞬、間がありながら、笑顔でそう言う彼の誘いを渋々承諾してしまった。

