「あの人、知ってる。」
私はボーッと二人の様子を見ながら、そう呟いた。
黒髪のショートヘア。忘れるはずもないあの綺麗な顔立ち。祐一と一緒にいたのは、前にカフェで見た元カノだった。
百合の花みたいだと感じた、あの人。
「まだ続いてたんだ......」
呆れて、笑うしかなかった。
正直、カフェで微笑まれた時、嫌な感じがした。祐一の大丈夫も、一つも安心できなかった。それが今なら説明がつく。点と点が繋がった瞬間だった。
どこか自信ありげな、あの時の表情。きっと、浮気にも気づかず能天気に付き合っていた、馬鹿な女を笑っていたんだ。
すると、ホテルの前で抱き合い、キスをする二人。その瞬間、私の中で張り詰めていた糸がプツンと切れた。
成宮さんの制止も聞かず、怒りに身を任せて勢いよく車を降りた。
足早に彼らの元へ近づいていくと、祐一が驚いたようにこちらを見た。隣にいる彼女の腕は掴んだまま、呆然と立っていた。
「詩音、あの、これは.......」
ーーパンッ!!!!!
彼の言葉も最後まで聞かず、近づいた瞬間に思いっきり頬っぺたを引っ叩いた。ジンジンと痺れる手の平。怒りで、小刻みに体が震えた。

