そして、10分ほど車を走らせた頃だろうか。着けばわかると言われたその時は、突然訪れた。
車が止まったのは、人通りの少ない路地裏。何もないこの場所でエンジンを切った彼に、私は問いかけた。
「ここ、どこですか?」
すると、ふぅーっと息を吐く成宮さんは、何も言わずに携帯をいじり始めた。
訳が分からず戸惑いつつも、話し始める様子もない彼に疑問をもちながら、とりあえず黙って待つことにした。
そうして、5分ほど沈黙が続いた頃だろうか。そろそろ痺れを切らした私は、彼に話しかけようと顔を上げた。
その時、私は目の前の光景に言葉を失った。体中の血管がドクドクと脈打ち、体が熱くなってきた。
「ごめん。でも俺が言うより、見てもらった方が早いと思って。」
そう言う成宮さんの言葉も、ほとんど耳には入ってこなかった。
小さなホテルのロビーから出てきた、一組の男女。二人は親しそうに腕を絡め合い、笑顔で会話を交わしている。心臓がギュッと締め付けられるようになりながら、私は思わず声を漏らした。
「祐一.......」
見たくなかった。他の女の人と一緒にいるところなんて。
私は、服の裾をギュッと強く握りながら、涙が溢れそうになるのを必死でこらえた。

