複雑な思いを抱えながら、彼の元へと近づいていき、顔を見合わせた。私はニコッと微笑み、歩き出す彼の腕に手を回そうとした。
その時、体が勝手に反応した。手が直前で止まり、なぜか躊躇っている自分がいた。
何も知らない祐一は、前を歩くご両親と何食わぬ顔で話している。そんな彼の横顔を見上げながら、私はその手をゆっくりと下ろした。
どうして、嘘なんかついたんだろう。自分の仕事の都合なら、そう言えば良かった。今までだって、彼の仕事が理由で予定がなくなったことなんて何度もあったから。
だからお父様の都合だと、わざわざ嘘をつく必要なんてなかったのに。それとも、今回ばかりは、自分のせいにされるのが嫌だったとか?でも、そんなことを気にする人じゃなかったはず....
いろんな想像が頭の中を駆け巡り、したくもない疑いを持ってしまう。
そして、彼がついた一つの嘘が、蓋をしていたある言葉を思い出させた。
『あいつの別の顔』
待たせていた車にご両親を乗せて見送り、私たちも帰ろうという時。私は、電話をしに彼の元から離れた。
そして、震える指である人物の名前を押し、意を決して電話をかけた。呼び出し音が鳴り、思っていたよりも早く相手の声が聞こえてきた。
私は生唾を飲み、深く息を吐いた。
「この前の続き、聞かせてください。」

