「でも、良かったわ。安心した。」
遠い記憶の中に浸っていると、そう言って笑顔を見せるお母さん。そんな母の顔を見ていたら、もう心配はかけられないと、心底そう思った。
成宮さんとは今、また一緒に働くことになってしまったけれど。そんなこと、口が裂けても言えない。
「ほらほら、疲れたでしょ?ゆっくり休んで。」
私は、二人の背中を押しながらそう促し、エレベーターに乗せ見送った。
「よしっ。」
そして二人が見えなくなると、私は足早にホテルを出た。
すると、すぐにご両親の姿が見え、待ってくれていた祐一たちの元へ急ぎ足で近づいた。
「すみません、お待たせしました。」
「ああ、ご両親は無事にホテルへ入れたかな?」
「はい。見送ってきました。今日は本当にお時間をいただいて、ありがとうございました。」
そう頭を下げた時、ふと、祐一の姿が見えないことに気がついた。私は思わずキョロキョロと辺りを見渡し、それでもいないこの状況を、不思議に思った。
「あれ、えっと、祐一さんは.....」
「なにか電話が来たとかで、どこかに話に行ったかしらね?あの子も忙しないったらないわね、もう。ごめんなさいね?」
お母様のそんな言葉に空笑いを浮かべながら、一人になってしまったこの状況にソワソワとしていた。

