出張から戻った後、2日間の代休をもらい出社した休み明け。

「あっ、蕪木さん!ちょ、ちょっと!!」

「え?おはよう、紗和ちゃん。」

「おはようございます。って、もう、それどころじゃないですよー!」

 会社のビルの入り口で紗和ちゃんに捕まり、強引に腕をとられ、外へと連れ出された。

「どうしたの、そんなに慌てて。」

 私の手を引く彼女の後ろ姿を見ながら、いつもと違う様子に違和感を覚えた。少し離れた木陰まで引っ張られると、突然こちらを振り返り、凄い形相で私を見た。


「出張中、成宮さんと何があったんですか!?」


 あまりにも突然で、驚きを隠せなかった。

「え、なに急に。」

「いいですから、私には隠さないでちゃんと言ってください!」

「いや、そう言われても.....」

 状況が飲み込めずにいると、ため息をつく紗和ちゃんは、しびれを切らしたように言った。


「じゃあ、正直に答えてくださいね?」

「うん。」

 私は、恐る恐るそう頷くと、彼女の言葉に思わず耳を疑った。




「蕪木さん。成宮さんと同じ部屋に泊まったって、本当ですか??」




 しばらく、言葉を飲み込むのに時間がかかり、動揺を隠しきれなかった。

「どういう、こと?」

「社内で凄い噂になってますよ。」

 その瞬間、さーっと血の気が引いていくのが分かった。