カーテンの隙間から漏れだす朝日とともに、私は目を覚ました。ぼんやりとする目を擦りながら顔を上げると、ベッドの上にあるデジタル時計が『07:00』を示していた。

「まだ7時.....。」

 蕪木 詩音(かぶらぎ しおん)、25歳。普段よりも30分、早く目が覚めてしまいました。


 ふぅーっと息を吐き、おもむろに体を起こすと、隣には気持ちよさそうに眠る彼の姿があった。私はベッドからそっと抜け出し、彼を起こさぬよう静かに寝室を出た。


 同棲を始めて三ヶ月。付き合って三度目の夏を迎えていた。あくびをしながら廊下を歩いていくと、いまだ慣れない光景に、思わずため息が出た。

 ガラス張りのリビング。壁にかかったスクリーン並みの大きなテレビ。パーティーが開けるかと言うほどの、無駄に大きいコの字型のソファ。リビングほどの広さがある、大理石のシステムキッチン。どれもこれも規格外。私には到底理解できない世界。


 栗色の長い髪の毛を後ろで一本に束ね、洗面台の鏡にうつる自分を見つめた。

「あなたは、本当に私かな?」

 自分で自分に問いかけるようにそう呟き、そして落ち込んだ。こんな生活、私には似合わない。私はモヤモヤとする心をかき消すかのように、ただ夢中で顔を洗った。