外見より中身が大事なんて、そんなのは嘘。


「あーやっぱりうまくいかない!」

私こと山中(やまなか)(さくら)は朝から鏡の前で(うな)っていた。


癖の強い髪の毛をアイロンで伸ばしたまでは良かったものの、まぶたが重すぎて奥二重がどうしても二重にならない。 


「桜、遅刻するよ!」

一階の階段下でお母さんが叫んでいた。


「はーい! 今行くから!」

結局、私は途中までした化粧をすべて落として、いつものように素顔のまま学校へと向かった。


「おはよう、桜」

昇降口で友達の渡辺(わたなべ)涼香(すずか)と会った。

涼香は今日も可愛くて、髪の毛も三つ編みにしていた。


「あれ、なんか今日髪型違う?」

「う、うん。ストレートにしてみたんだけど……」

「新鮮でいいね!」

「本当?」

安心したのもつかの間に、教室に入ると仲のいい男友達が近づいてきた。


「山中、どうしたんだよ。お前だけ雨にでも濡れたの?」

たしかに髪の毛はワックスを付けなかったので、ぺたんこになっていた。


「は? 違うし!」

「みんなー! 山中が女に目覚めたぞ!」

「うるさい、バカ、黙れ!」

乱暴な言葉で男友達に言い返していると、クラスメイトの中嶋(なかじま)(つばさ)くんと目が合った。

その瞬間、私の心臓はドキリと跳ねあがる。