許嫁の彼




しばらくあたしは呆然としていた。




「春桜お嬢様?」



北条に名前を呼ばれてはっ、とする。




「「「失礼しました」」」



お父様の部屋を後にした。



あたしは2人の後ろをついていく。



「‥‥ねえ、空芽、北条」



その背中に声をかけると、ん、と2人が振り向く。




「‥‥知ってたの?2人は‥‥あたしと空芽が兄妹じゃなくて許嫁だったこと‥」



「‥‥兄妹じゃないことは、知っていた」



そう言ったのは、空芽。



隣で北条も小さく頷いた。



「許嫁だったことは、なんとなく」