許嫁の彼



春桜side



コンコン



夜の9時過ぎぐらいだったと思う。



突然部屋を訪ねてきたのは、北条だった。



「今日、どうして泣いてたんだ?」



今日は、『執事の北条』としてじゃなくて、『幼なじみの統来くん』として話しにきたらしい。



「別に。何でもない」



統来くんに背を向けて、ベッドの方に歩いていく。



「お前、好きなやついるのかよ?」



私の心臓は、急に跳ねる。



「統来くんには関係ないよ」



ムッとして言い返す。



「‥‥‥空芽のこと、好きなんだろ」



爆弾発言。