許嫁の彼



「ねえ春桜、百合花はさ、知らないの?空芽くんと許嫁だったこと」



百合花がお風呂に入った隙に聞いてきた。



「うん。言う気もないよ」



「そっか」



そこで会話が途切れ、シーンとする。



「でさ、ぶっちゃけ空芽くんとどこまでいってんの?」



私はその質問に驚いて、思わず持っていたシャーペンをとり落す。



「あ、動揺したね?」



「バカにするなー!」



茉子はニヤニヤと挑発するように私を見据える。



「‥‥何もないよ。それにまだ、あたし空芽のことお兄ちゃんだと思ってるし。


理解しようとしても、思考が追いつかないんだよ」