あたしはそっと、空芽の後ろまで歩いて行った。
そして、後ろからそっと抱きしめた。
「あたしは、空芽のこと、お兄ちゃんだと思ってる。
正直まだ、呆然としていて分かんない。でもちょっとずつでも理解する」
そう言うと、空芽がくるりと方向を変えて、あたしをぎゅっと抱きしめた。
「うん‥‥」
空芽の今にも消え入りそうな、弱々しい声。
あたしたちは、今のまま、あたしたちのまま、いることにした。
許嫁という事実に
背を向けるようにして——。
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