「──今年は逃げなかったんだね」 絶望する私の耳に舞い込んだそれは、幻聴かと思った。 乱れた呼吸が微かに聞こえる。 神様に願いが通じたのか、穴が空くほど見た彼の姿は、幻か夢かとさえ思った。 「成長したじゃん?」 剣崎の手から涼太が解放される。 ドンッと勢いよく地面に倒れ込んだ涼太に駆け寄ると、その身体はぐったりしていた。 「頑張ったね、涼太くん」 ……星屑が滲む夜の中に、 肩で息をする白坂くんが見えた。