「……なんのことだ?」 「やめろよ凪。この状況でしらを切るつもりかよ。白々しいのはテメェじゃねえか。ねぇ……?」 「……っ!!」 確実に私の方へと投げられた探るような声。 「隣のお前。ねぇ、顔を上げてごらんよ」 男の人なのに、やけに妖艶に笑ったような気配がした。 ……どこかで聞いたことのあるような声に思えたのは、迫り来る恐怖のせいか。 「俺、凪よりいい男だよ? ほら早く。大丈夫だ。怖いことはしないから」 ───絶対に顔を見せてはいけない男。