その醜い音に休止符が打たれた理由を考えたとき、既に神社にはただ1人。
踞る私の影だけがポツリと残っているだけ。
もう…、終わった…?
あぁ、この感覚も随分と忘れていたみたいだ。
「っ…、」
立ち上がろうとすれば全身が切り刻まれたような痛みが走り、体も重い。
耐え抜くには到底大きすぎるものだった。
それでも帰らなければ日が暮れてしまうから。
『暗くなる前には戻れ』
屯所を出る度に毎度言われる台詞。
そんなものが今になってもずっと響いていた。
帰る場所がある、待ってくれている人がいる。
殴られ屋として虐めを受けていた毎日からは考えられないものだった。
「かえらなきゃ…、…かえ、らなきゃ…」
顔を歪ませながらも立ち上がり、家路を辿る。
暗闇に追い抜かされそうになってもただ目の前を追いかけた。
私の前には───…彼等が居た。
「まって、近藤さん、」
まるで幼子が母親へとねだるように両手を伸ばし、私にしか見えない幻を必死に掴もうと。
ただ必死に動かせる手を伸ばした。
それは彼等にどんな感情を求めているのか、それすらまだ分からないことだとしても。