部屋の窓から月明かりが差し込み

窓を背にして座り込むあたしの前には、月明かりが作り出した、あたしの小さな影ができる


いなくなりたいな



「もう疲れたよ」



そう呟いた時


月明かりが、あたしとは別の、人の形の影を映し出した



え?



ガタンと音がなる


誰かいる?


振り返るよりも先に、その影はあたしに近づきそして



「杏……おそくなってごめん。誕生日おめでとう」



あたしを後ろから抱きしめて、耳元で優しそう言う。


その瞬間時計が0時を指した



な、んで?

何が起こってる?

夢でも見てるん?




「……泉?」



あたしの部屋に現れたのは、関東にいるはずの…泉だった


おかしいやん

え?ナニコレ



「間に合わねぇかと思った」



そうニコリと笑う泉

しっかりと目に映す


いやいや…


「本物や…」


その手に触れてみれば、温かくて…大きな手は、あたしの知ってる泉そのものだった


おかしいやん
あたしの最後に会いたいって気持ちが、妄想で泉を作り出してるん?