愛は惜しみなく与う⑤

最悪

きもすぎるやろ
ハァハァ
呼吸が乱れたまま


「泣くか?」

「……黙れ」


ゆっくりと呼吸を整える。酸素が脳にいき、冷静さを失っていた自分の頭が、少しスッキリした


それと同時に

このあり得ない現実に
吐き気がした

服の袖で唇を拭く
気持ちが悪い
なんやねんこいつ。

ほんまに何がしたいんや



「如月冬馬って…あんたのことやったん?」


「俺が誰に見える?」


そう言って目の前のサトルは、丁寧にスボンに入れていたシャツをズボンから引っ張り出して、服を捲り上げた

そして見えたサトルの腹には


痛々しい傷が残っていた




あたしがあの日、殺すつもりで刺した場所



「懐かしいな。あの時のお前は最高だった」



ニヤつくサトルを見て、現実なんやと再認識してしまった


「お待たせ、鈴ちゃん」


部屋に母上が息を切らし入ってきて、向かい合うあたし達をみて、不思議そうな顔をした。
サトルは服を乱したまま。あたしもボロボロで…


「どうしたの?」


母上はあたしに駆け寄ってあたしの頬に手を添えた

泣きそうや

誰に縋ればええんよ