愛は惜しみなく与う⑤

ハァハァ

あたしの苦しそうな息遣いだけが、部屋に響く

どれだけ息を吸っても、酸素が身体に行き渡らない。

くるし…
自分ではどうもできず、ただ床を見つめて呼吸を整えるために必死になる。


焦れば焦るほど、息ができない



「……助けてって言えよ」



そんなサトルの声に返事をする余裕なんてない。ただサトルはあたしに何かする訳でもなく、ただただ苦しむあたしを、上から見下ろすように見ていた


しんどい
苦しい

ガンと机を殴った


手の痛みで気が紛れるかと思ったが、呼吸ができないことに変わりはなかった


あかん。意識が朦朧としてきた
目眩がする

あかんって。


もう限界。そう思った時、しゃがみ込むあたしの背中に手が触れた


そして髪の毛を鷲掴みにされて、上を向かされ、サトルと視線が合うように、強引に引っ張られ

「その顔だ。その嫌悪感でいっぱいのお前を、俺のものにしたい」


遠ざかりかけた意識

あたしを見て笑ったサトルが近づいてきた


!!!!

唇に嫌な感触が
息を上手く吸えないあたしの半開きの口に、サトルの口が重なる


何をされたか理解した時
サトルを突き飛ばす

その時、ようやく吸えなかった息が吸えた