愛は惜しみなく与う⑤


あぁ


ほんまにこいつはサトルや

目の前であたしを見て笑う男は、ずっと探し続けていたサトルや


間違いない



冷静?そんなんなってられへん


すぐ近くにあった本を放り投げて、避けたところに殴りかかる

サトルはバランスを崩しながらも、あたしの拳を受け止めて言った



「何がどうなってるか聞かなくていいのか?」


まとわりつくような視線
トラウマにもなったその表情は、あたしの鼓動を速くさせた




「急ぐなよ。これから時間は山ほどあるんだから」


顎を掴まれ無理矢理視線を合わせられる

あたしの目に映るサトルは、見たこともないくらい、嬉しそうな顔をしていた



「お前はもう、俺のものだ」



サトルがそういった瞬間、息が苦しくなった

や、ばい

冷静なふりをしてサトルに飛びかかったはよかったけど。パニック状態なのは、抑えれへんかった。
身体は…心は…限界やった


苦しい


過呼吸


久しぶりのこの感覚

息を吸おうとしても、酸素が入ってこない。二酸化炭素だけを吸って、そして吐けない。そんな感じ



苦しい