愛は惜しみなく与う⑤


あたしに真っ白のハンカチを渡してきて、母上から冬馬さんと呼ばれて…
この部屋に入ってきた、あたしの婚約者である如月冬馬の姿は



あたしの忌々しき復讐相手の


サトルだった




あたしと同じように黒髪になってるサトル。でも、この顔をあたしは忘れへん


忘れるわけがない



母上がこの場にいることも忘れてた
全て頭から飛んだ



ガッと手を伸ばしたが、サトルにその手を取られる



「元気そうでなによりです」


力一杯伸ばした手を、サトルは片手で簡単に止めて、目の前で笑った



どういうこと?

何がどうなってるん?



変な夢でも見てるんか?
何でずっと探してたサトルが、今目の前におるん?



「お母様、鈴さんが少し怪我をしたみたいで」

「あ、分かったわ。ドクターを呼んでくるわ」


こんな時も大袈裟な母上は、部屋から出て行ってしまう


待って


こんなところに置いていかんといて




「お母様!!!」


あたしの声はどんな声やったんやろうか。振り返った母上は、驚いた顔をして、心配そうな顔で近づいてきた