愛は惜しみなく与う⑤

杏に似た声
ほとんど本人と区別がつかないくらい

ただ杏と違い、標準語のその話し方は

誰なのか想像ができた



「おい…てめぇ志木さんに何した?」




『……刺した。血だらけ。それが何?貴方に何か関係あるの?』


悪びれずそう答えた電話の向こうの女は、きっと……杏の妹の鈴だ


『あれ?なに?意識朦朧としてるの?これじゃあ……お姉ちゃんを助けにいけないね。ずっと頑張って守ってたのにね。あっけないね。最後におねえちゃんの名前呟くんだ。ふーーん。つまんないの』


志木さん?

返事してくれよ。そう言っても、電話から志木さんの声が聞こえることはなかった


やばいぞ

妹の病院の場所も教えてもらってない。でも、一緒にいるということは、志木さんが妹を病院から連れ出すことには成功しているんだな?

ただ

刺されたって…


『ねぇ、あなた、おねえちゃんの何?』


気持ち悪い
電話から聞こえてくる声は杏にそっくりなのに、妹の声は、絡みついてくるみたいで気分が悪くなる



「杏は…俺の仲間だ」


志木さんは大丈夫なのか?それが心配で妹の電話どころではなかった