愛は惜しみなく与う⑤

後ろから聞こえる雑音も酷い
どこにいるんだ?


『鈴と接触しました。ですが…くっ…はぁはぁ。時間が…ありません。私はどうも、動ける状態では…ないようでして』


「え?大丈夫ですか?何かあったんですか?」


ただならぬ雰囲気を感じ取り冷や汗が出る。乱れる呼吸に、荒い息

志木さんに何かあったのは間違いない



『少し…ヘマしました。くっ…杏様を、守ってください。蘭様からずっと電話がきてました。きっと…杏様は家に帰らないといけない。っん……』


苦しそうに言葉を紡ぐ志木さん
電話の後ろからは踏切の音が聞こえる


「どこですか?迎えに行きます」

『ダメです。杏様を守ってください。わたしは…大丈夫ですので』

「志木さん、どこだよ!今外にいるから。場所を教えてください」


そう大きな声を出したとき


杏に似た声が、電話越しから聞こえた


え…?



『誰と電話してるの?まだ生きてるの?いっぱい血が出てるのに…死なないの?』



その声を聞いて、身体中がサッと冷え切った