愛は惜しみなく与う⑤

杏は特に何も言ってはいないけど、きっと志木さんどうしたのかなって、思ってると思う



『学校始まってるんですよね』

「はい。テストも始まって朔が毎日杏に怒られてますね」

『杏様は、要領が良いので、昔から勉強も得意でした。教えるのも上手いんですが、短気なんでね…朔さん殴られてませんか?』


「……殴られる手前くらいまではいってるかな」


微笑ましいよ
杏が笑ってみんなと戯れるのを見てると。
でも最近は、そんな笑ってる杏も、ふと切ない表情をする


何かを思い詰めた…



志木さんと、ちょくちょく連絡を取りながら数日が経ち……
何事も起こらず、無事テスト期間が終わり…


杏がバイトへ行った


終わる時間は夜だから迎えに行こうかなんて考えていたとき、志木さんから連絡が来た



そしてその電話は



志木さんと話す、最後の電話




『泉…い、いま大丈夫ですか?』

「大丈夫ですけど…どうかしたんですか?」


電話越しの志木さんの声は、息が上がっているのか、所々上擦る声