愛は惜しみなく与う⑤

そしてあたしは一気に現実に引き戻された


母上からの電話を切り、不安で胸が一杯になった。どうしよう

もう


逃げられへん




志木…



泣きそうになりながら志木に電話をする

けど、コール音が虚しくなるだけ


「なんでよ、なんでよ!!志木…なんで近くにおらんの。なんで電話に出てくれへんの!!」



こわい

1人じゃ無理や



やのに


志木が居ない



どうしよう

帰らなあかん

どうしよう



1人や


志木に何かあったかも知れへん。雄作さんに連絡したい。でもできひん

どうしたらええの?



あたしは……





「杏?1人で帰るなよ」



そこに来たのは泉
バイト終わりのあたしを迎えに来て、既に居なかったから探してくれたんかな


なぁ泉




「助けて…志木が、おらんくなった」



泣いてたと思う。もう心がぐちゃぐちゃで、どうしたらいいんか分からへん


助けて



「志木は、あたしに何か隠してた。1人で何かしようとしてた。もしかしたら…何か事件に巻き込まれてかもしれへん」