「おい、杏!!慧が英語は教えるの嫌だって、どっか行っちまった」
朔がガタガタと机をあたしの方に持ってくる。
朔の英語な…破滅的やからな
逃げ出したくなる気持ちはわかる
「俺は少し休憩するね」
響は、朔がんばりなよ?と、教室を出て行った。
「なんだ、あいつ。腹でも痛いのかな」
「……かもな。とりあえず何処が分からへんの?」
響に変な気を使わせてしまったな
元気のない笑顔。
あたしは、ほんまに下手くそやな、こういうの。
もっと上手に…
いや、ちゃうな
上手にできてしまったらきっと
あたしはあたしじゃなくなる。
悩んだり、まだ諦めきれへんかったり…そういう気持ちがあるから、まだあたしはあたしで居られる
嘘つくのも誤魔化すのも得意になったら
それはもう、あたしじゃないよな
「おーーい?お前も腹痛いのか?」
「んーん。朔がアホすぎてどうやったら覚えてくれるやろかって、必死に悩んでた」
は?んだよ!
そう怒る朔は、教科書に目を移し呟く
「お前が…元気ないから……。覚えれるもんも覚えれねーよ」



