愛は惜しみなく与う⑤


そうか
そういえばそうやった。

血だらけの泉


「なつかしいな」


まだそんなに時間は経ってないのに、なつかしいなと感じる出来事。
あの時は…大変やった


泉でかいし、引きずって帰るのは、なかなか大変やった


「女に拉致られたって聞いて、俺たちはかなり焦ってたけどね」


そうそう。
最初みんな敵意むき出しやった。朔なんて、暴言吐いてきてたし。
それはまぁ今もあんまり変わらへんけど


「皆んなと仲良くなれてよかったわ」


これがあたしの本音
本当に良かったと思う

なんの目的もなく、ただただ卒業という名の、死へのカウントダウンのような日々になると思ってたから



こんなに毎日楽しくて、いっぱいみんなの優しさに触れれて…

みんなの事を知ってもっと好きになる


すごく素敵な日々に変わった


朔に勉強しろって怒ってるのも、平和な日常の一部分


こんな日々が続けばいいのに


そう思う



「あーん?」

「え?あぁ、ごめん。ぼーっとしてた」


響が遠慮気味にトントンと机の上に乗るあたしの手を叩いた