愛は惜しみなく与う⑤

思い返してみれば、ただの一目惚れなのかもしれない。
あの路地で初めて会った時から、俺の中の、何かが動いたんだ


ずっと止まってた気持ちが


俺にとって杏は、ただ1人の、他の誰でもない。特別な存在なんだ



「……覚悟とか難しいことはわかんねぇけど」


何かを考えるように腕を組んだままだった朔が、顔を上げてこっちを見る



「俺は、泉に救われて、この場所に救われて…でも、杏が居なきゃ一生家のことと向き合うことはなかったと思う。だから…あいつが何か抱えてて…それが原因でしんどい思いをしてるなら。助けてやりたいと思う」


お、俺も!!!

そう言って響は前のめりになって言った



「俺は…俺も…みんなのおかげで毎日楽しかった。でも杏がいたから…あの女を殴り飛ばしてくれたから。今こうやって…バイトも頑張ろうって思えた。杏が美味しいご飯作ってくれるから…料理が好きになった。俺も難しいことは分からないけど…杏が居なくなるのは嫌だ」