愛は惜しみなく与う⑤


そして今こうして曝け出して杏ちゃんと話して、初めて自分の気持ちが分かった



「ねぇ、すごく恥ずかしくてみっともない話なんだけど、聞いてくれる?」


杏ちゃんの小さな手を握る


モヤモヤして頭を支配していた感情


杏ちゃんを1人の女性として好きになっていたら、辻褄があったんだ。
心の穴も埋まって、温かい気持ちになれたから。
でも俺は、辻褄を合わせに行った


心が埋まったから、杏ちゃんを好きだと思った


そうじゃないんだ

本当に好きなら、理由なんてない。

無理矢理自分に言い聞かせたり、気持ちを押さえ込んだりしていた。
そのモヤモヤが…


それがスッと晴れた気がした


初めてだよ?人生で女の子の前で泣いたりしたのは。初めてなんだ。自分から甘えたり、情けない姿を見せるのは。

きっとこれは特別な感情なんだろうなって思ってた。



とても大事な気持ちなんだけど



思ってたのとは、少し違ってたんだ





「俺は、杏ちゃんに……母親を重ねてたんだ。記憶の片隅にあるんだ。遠い昔、母親に抱きしめられた記憶。母親の温もり。母親の優しい声。

俺は。情けない。

杏ちゃんに、母親の温もりを求めてたんだ」



そう

俺は



女性としてではなく、杏ちゃんを母親のような、そんな温かい存在として、好きになっていたんだ


なんでも包み込んでくれて、全て受け入れてくれる。


自分が受けてこなかった母親からの愛情を、杏ちゃんから貰おうとしてたんだ