そして今こうして曝け出して杏ちゃんと話して、初めて自分の気持ちが分かった
「ねぇ、すごく恥ずかしくてみっともない話なんだけど、聞いてくれる?」
杏ちゃんの小さな手を握る
モヤモヤして頭を支配していた感情
杏ちゃんを1人の女性として好きになっていたら、辻褄があったんだ。
心の穴も埋まって、温かい気持ちになれたから。
でも俺は、辻褄を合わせに行った
心が埋まったから、杏ちゃんを好きだと思った
そうじゃないんだ
本当に好きなら、理由なんてない。
無理矢理自分に言い聞かせたり、気持ちを押さえ込んだりしていた。
そのモヤモヤが…
それがスッと晴れた気がした
初めてだよ?人生で女の子の前で泣いたりしたのは。初めてなんだ。自分から甘えたり、情けない姿を見せるのは。
きっとこれは特別な感情なんだろうなって思ってた。
とても大事な気持ちなんだけど
思ってたのとは、少し違ってたんだ
「俺は、杏ちゃんに……母親を重ねてたんだ。記憶の片隅にあるんだ。遠い昔、母親に抱きしめられた記憶。母親の温もり。母親の優しい声。
俺は。情けない。
杏ちゃんに、母親の温もりを求めてたんだ」
そう
俺は
女性としてではなく、杏ちゃんを母親のような、そんな温かい存在として、好きになっていたんだ
なんでも包み込んでくれて、全て受け入れてくれる。
自分が受けてこなかった母親からの愛情を、杏ちゃんから貰おうとしてたんだ



