愛は惜しみなく与う⑤

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困らせたいわけじゃない
笑顔でいてくれればそれでいい

なのに困らせてみたいと思う


この感情は何なのかわからない


杏ちゃんは、ほんとうに魔法使いなのかもしれない。
だって、誰にも言えない気持ちを、自然と言わせてくれるから

どうして彼女に聞いて欲しくなるんだろう


どうしてすがってしまうんだろう
この、どうしてという気持ちは、杏ちゃんと話して、分かったんだ。

どうしてこんなに杏ちゃんに甘えたくなるのかが。



「俺さ、母親に捨てられて、父親は若い女に貢いで金搾り取られていなくなって。ずっと1人だったんだよね」


杏ちゃんに話したことはなかった。
特に自分の中でも吹っ切れたことだと思っていたから。
特に気にしていない。

けど、人が聞くと驚くのかもしれない。


「凄い優しい夫婦に引き取られて、不自由なかったんだけどさ。完璧に性格が捻くれちゃって」


すぐに養子として引き取ってくれる夫婦が現れた。すごくいい人たちで温かかった。

だけど、幸せだと思えなかった


「自分の父親を見ていたから、女の子の印象が悪くてさ。あ、今は大好きだよ?だけど、ただの道具としてみてしまった」