愛は惜しみなく与う⑤

暗い教室で、泉が座る席の前に座る


「優しいな」

「どこがだよ。あいつがへこたれないだけだ」

そうかな。前の女の子の時とかは、すごい冷たい顔してたからさ。
ちゃんと真っ直ぐに気持ちをぶつけてくる人には、泉なりにしっかり対応してるんやなって思った


あたしは


全然みんなに誠実に応えられてないな


「あたしも泉みたいに、優しくなりたい」


椅子に逆向きに座り、泉の座る席の机に突っ伏した

どうも、うまく行く気がせん
頑張ってみるけどさ。心が折れそうになってしまう


「大丈夫だよ」


少し控えめにあたしの頭に触れた泉

泉の大丈夫は、安心するな。
泉のそばに居ると、勇気が湧いてくるから、不思議よな

頑張れる気がしてくる


髪に触れる手が心地良くて、目を閉じる


真っ暗な教室にいるのはあたし達だけ
静かな空間
何も音のしない空間


「杏は、俺のこと信用してる?」


突然の問いかけ
目を閉じたまたあたしは答えた


「もちろん」


考える必要はない。
あたしの気持ちも身体も委ねれる

泉になら背中を任せられる