涼と千秋くんと一緒に走る。

着いたのは、オフィスビルの前。



「大丈夫か?」



涼の言葉に、息を整えながら返事をする。



「大丈夫。ここに神崎くんがいるんだよね?」

「蓮のことだから、親父のところにきっといる」



涼の言葉に、覚悟を決める。


神崎くんとお父さんの間になにが起こっているのかは分からない。

だけど、きっと神崎くんのことだから、大事なことをひとりで解決させようとしているんだ。



「茜ちゃんは、蓮からどんな話を聞いてる?」



千秋くんが私に聞く。



「ルームシェアを続ける条件にお父さんの仕事を継ぐって……」

「そこまで聞いてるんだね」

「うん」



千秋くんの顔が少し暗くなる。

だけど、その目には意志が宿っていた。



「止めよう。蓮のお父さんを説得しよう」

千秋くんの言葉に私と涼は頷く。


覚悟を決めて、ビルのドアに近づく。


自動ドアが開き、冷房の効いた空気が全身に当たる。

受け付けに真っ直ぐ向かい、スーツを着たお姉さんに声をかける。