耳が不自由な人は、読唇術に長けている。 和哉もそうだった。 口の動きだけで、人が何を言っているのか分かってしまう。 昔一度、和哉に読唇術を習ったことがある。 そういえばあのとき、 桜の目から光が消え、首が落ちるとき、 あの口は私に、何かを伝えようとしていた。 そうだ。あの口の動きは…… 「喰喰ちゃんの“ウツワを壊して”」 思わずベッドでそう口にすると、響介が部屋に入ってきた。 「ウツワって?」 「ううん。なんでもない」